2010年11月24日

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

2010年10月30日(土)、台風によって開催が危ぶまれたPeace Music Festa!辺野古2010が無事開場を迎えることが出来た。この開場に間に合わすため、強風の中、実行委員、ボランティアスタッフたちが集い、徹夜で会場準備をしたのである。大きなテント型のステージを扇形に囲むように、屋台が並び、その外をさらに囲むように辺野古の美しい海が広がる。そして、会場の側には浜辺を分断する有刺鉄線が不自然にたたずむ。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

そんな会場で幕開けを飾ったのが、ハワイの県系人によるグループUkwanshin Kabudan(御冠船歌舞団)である。沖縄民謡とハワイアン・ミュージックの心地良い演奏の中にウチナーンチュとしての深いアイデンティティを表現する。そんな彼らが、戦後、米軍の捕虜収容所で生まれた屋嘉節を現代の沖縄に投げかける。「なちかしや沖縄 戦場になやい 世間御万人とぅ 涙流ち」(悲しい沖縄 戦場になり 世間の皆が涙で袖を濡らす)と沖縄戦に対する嘆きがキャンプシュワブに隣接する辺野古ビーチのロケーションの中でリアルに響き渡る。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

次に登場したギタリストPaul Mahouxは、対照的にギターエフェクトを駆使した言葉のないインストゥルメンタルの世界を展開する。セミの鳴き声さえも音響効果のように聞こえ、心地よいギターエフェクトが空間を支配する。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

東京から参加したハリネコの沙知は辺野古の自然と調和するかのような綺麗なピアノの音色を奏でながら、時にオルタナティブな即興演奏を交え、のびのびと歌い観客を楽しませた。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

同じく東京から参加したレゲエバンドTEX & the Sun Flower Seedは一人だけのアコースティックver.でありながらも、バックバンドを感じさせる熱い演奏で平和へのメッセージを発信する。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

岡林信康や高田渡らとともに1960年代のフォーク・シーンで活躍し、60歳を過ぎた今なお現役で歌い続けるフォーク・シンガー中川五郎は、往年のファンから若い聴衆まで魅了するパフォーマンスを繰り広げた。最後の曲「ビッグスカイ」では、終盤にギターを捨て、そのまま歌い続け、舞台から観客席へジャンプして終了するというパワフルなステージングを魅せた。尻餅をついてしまうというオチがあったが、それさえも愛おしくなるほど中川五郎の人柄が表れた素敵なライブだった。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

次に登場したエルビス・ウチマは、コザの街を切り取ってきたかのような荒々しいロック・ギター(アコースティック)と美しく繊細なヴァイオリンの音色を伴奏に、社会派ソングを展開して観客の耳を傾けた。

会場から少し離れた辺野古の座り込みテントでは、実行委員のひとりであるKEN子がナビゲーターとなって、環境問題や基地問題を考えるためのアトラクション・プログラムを行っていた。10数名ほどの参加者を前に、沖縄を代表するイベント・オーガナイザーから環境アクティビィストへシフトしていった自らの経験を語る。集まった高校生や大学生らとともに沖縄の環境や社会について語り合い、開発に伴う諸問題について理解を深めていった。その他にもテント村では座り込みを続ける住民との対話で辺野古の基地問題について理解を深める観客の姿(Ukwanshin Kabudanのメンバーの姿も!)や、誰に言われるでもなく海岸のゴミ拾いをはじめるカップルなど、ライブに影響を受けた人々の姿が早くも見られた。
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同じ頃、ライブ会場では、昨今、注目を集めるレヴェル・ミュージシャン三宅洋平のライブが行われていた。原発建設問題で揺れる祝島や、COP10会場を旅してきた三宅は語った。「一番嫌なことは、過疎の村に開発の話がやってきたときに、住民が賛成と反対で二分されてしまうことだ。」資本の投入によって土着の人の繋がりが断たれることへの憤りが、彼の言葉と音楽によって紡がれ、まさにその現場である辺野古に響きわたる。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

そのメッセージを引き継ぐかのように、カクマクシャカはこのステージのために用意してきた曲「殺すな辺野古」を全身全霊で歌う。「繰り返される歴史の中、必要なものは本当は何?繰り返される歴史は長く、大事なことは本当は何?」の問い掛けから「殺すな辺野古」というフレーズが山原の森に木霊する。その中でカクマクシャカは叫ぶ「殺すな心」と。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

舞台は一転して、フリースタイルリフティングチームの闘蹴~SHOOT~による華麗なリフティングパフォーマンスで盛り上がる。メンバーも開始時間ギリギリまで入念なフォーミングアップを重ねるほどの気合いの入れようであった。

次は実行委員の一人であるマーシーがフロントマンを務めるバンドprocalのステージ。マーシーは今回の立役者の一人。彼や知花竜海らは、辺野古の住民にイベントへの理解や協力を仰ぐため、足しげく辺野古に通った。会場入り口で配布された「辺野古案内MAP」はもっと辺野古へ遊びに来てほしいという実行委員の想いや住民の地元愛に満ちた一枚だ。そんなマーシーの想いをのせたprocalの、どストレートなロックは台風を抜けた会場の天気のように清々しかった。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)
Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

ステージは続く。Peace Music Festa!史上初のラウド・ロック勢の先陣を切ったHeinous Criminalは8月に台湾でもライブをした実力派。アジアに広がりつつある沖縄ラウド(近年はレキオス・ロックという呼称が浸透しつつある)の力を魅せつけるかのような熱いライブを繰り広げた。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

次に登場したSTARS ENTERTAINMENTはダンス要素を取り入れたバスケットボールを使ったパフォーマンスで観客の目を釘付けにした。そのクリエイティブなパフォーマンスは最後のカチャーシーでも惜しみなく披露された。

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KUMAKARAは誰もが知っている往年の歌謡曲をかっこよくアレンジした演奏で、世代を超えて観客を楽しませた。自然と一緒に唄を口ずさむ人も見え、会場全体が温かい空気に包まれた。

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そんな会場に嵐を巻き起こすかのような強烈な登場をしたのが、オキナワン・ロックの生きる伝説ヒゲのかっちゃんである。KUMAKARAのメンバーをそのままバックバンドに従えたパフォーマンスだったが、観客席後方から登場したかっちゃんがなかなかステージまで上がってこない(笑)。とうとうスタッフに担がれてステージに上がるが、言葉では描写できないほどの脳みそを攪乱させるパフォーマンスで観客を大いに笑わせた。還暦を過ぎてもロックし続ける男は、辺野古の浜にまた一つ伝説を残した。

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ラウド系としては珍しい全員女性の3ピースバンドRUN it to GROUNDは、女性ならではの繊細な表現と、パワフルな演奏、そして破壊的なデス声が合わさった個性的なスタイルで、普段はラウド・ロックと距離を置いていそうな客層までも虜にしていた。今後の活躍に期待できる演奏でみんなを楽しませた。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

続いての創作太鼓衆 颯もメンバーが全員女性かつ少人数というユニークな創作エイサー団体である。普段エイサーでは使われないタイプの楽曲を使用した演舞で会場を活気づけた。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(前編)

次に登場したFAKE KINGZは数ある沖縄のラウド系バンドの中でも、最もタイトかつ激しい演奏を繰り広げるバンド。普段は米兵相手にライブをしたりもするFAKE KINGZは、隣接するキャンプシュワブに轟くほどの轟音で観客を完全にロックしていた。

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熱いパフォーマンスをクールダウンするかのように登場したのが、沖縄市を中心に活動するラッパーのさとまん。包み込むような優しいHIP HOPミュージックと映像を組み合わせたインスタレーションライブからは、コザの街の日常と幸せが描写される。そして、そのメッセージは辺野古の街が潜在的に持っている地元愛へと置き換え昇華されていく。

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トリを前に高まる興奮をさらに盛り上げたのがROACH。沖縄のバンドが好きなハードなロック色は残しながらも、歌謡曲を感じさせる日本的なメロディー表現で観客を楽しませた。動きでも観客を楽しませようとステージ上を動き回るヴォーカルたぁまぁの動きも印象的だった。

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いよいよトリのソウル・フラワー・モノノケ・サミットの登場で観客が総立ち。「アリラン」や沖縄民謡などを、モノノケ・サミット特有の祭りサウンドに昇華して聴衆の耳を楽しませた。また沖縄で注目の若手民謡歌手の上間綾乃との相性は抜群だった。三味線や太鼓の音色が辺野古の海に響き渡ると、もう自然と手足が動き出し、そのままカチャーシーに突入。3年ぶりの辺野古開催を辺野古の海が待っていたかのように音が弾み、人が踊る。こうして翌日のライブに期待を残したまま1日目が終了した。

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Text by Taichi Yamanoha
Photo by Shinichiro Shinjo / Taichi Yamanoha

(→ライブレポ後編に続く



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Posted by Peace Music at 20:29│Comments(0)ライブレポ
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