2010年11月24日

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(後編)

Peace Music Festa!辺野古2010の2日目。昨日の余韻が残る心地よい辺野古の浜。そんな浜に集った観客を初っ端から踊らせたのがラビラビである。縄文トランスの呼称に相応しい2人の打楽器奏者によるオーガニックなサウンドと高揚感あるビートが辺野古の自然と調和する。そして、普段はキャンプ・シュワブからの重機音が響く海に、どこまでも突き抜けていくようなヴォーカルあずみの歌声が響き、地平線に消えていく。

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そんな素敵なパフォーマンスの流れをそのままにSaolong To The Skyが登場。雨男の汚名を返上するかのような晴天の空に、清々しいロック・サウンドが響き渡る。ラビラビの声が地平線を目指したとすれば、シャオロンはその名(小龍)に相応しく、天まで垂直に突き抜けていくような声で辺野古から平和への雄叫びを上げる。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(後編)

ここからは沖縄レゲエ勢が立て続けに登場する。トップのJAVAはルーツ・レゲエを感じさせるスタイルと澄んだ歌声で聴かせるレゲエを展開する。

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次に登場したCOMATONは祖母への感謝を全面に出したパフォーマンスで彼なりの平和を祈念する。

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Operonは5人組のメリットを十分に活かしたライブを展開する。5人それぞれの個性がぶつかったパーティー感あるレゲエ・サウンドで観客を楽しませた。

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同じ複数Dee-JayのグループでもKing Jam Sessionは独特の遊び心で観客を楽しませる。ふざけながらも「Guidance」では彼らならではのピースフルなメッセージを発信して、第1回目のPeace Music Festa!出演時からの変わらぬ気持ちを表現した。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(後編)

全国デビューも果たし活躍するSOUTHは東京からの移動というハードスケジュールにも関わらず、パワフルなライブとポップなサウンドで幅広い観客を楽しませた。

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そして、満を持して沖縄レゲエ勢の締めに登場したのが45 with RADICALITESである。RADICALITESの渋いバンドサウンドと、跳ねるような45の熱いメッセージ、そしてベテランとしての安定感でレゲエ・ファンたちを完全にロックする。そして何より地元・名護への愛に満ちたパフォーマンスに観客も共感する。

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沖縄レゲエ勢の心地良いパフォーマンスに負けないとばかりに、今年、リリースラッシュが続く沖縄ヒップホップ勢が登場。先陣を切ったのは地元・名護をレペゼンする009である。ゲストもフューチャーするなどして、ジャンルを越えた地元愛あるライブを展開した。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(後編)

同じく名護市出身のMCいさっちが所属する琉球トライブにバトンタッチ。いさっちは基地建設で問題となっている大浦湾に面する瀬嵩区の出身。基地を取り巻く現状への憤りを表現した「ハンキチソング」での強烈なメッセージ以上に、彼らが全面に表現したのがいさっちが生まれ育った瀬嵩での日常を描写したリリック。「踊ろうか瀬嵩のに~せ~た~(訳:青年達)」と歌うと地元の仲間に合図して、みんなが微笑み返す。瀬嵩でのかけがえのない生活がそこにあることが何よりのメッセージだった。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(後編)

次に登場したDASTAMASはペルー生まれのROMELとCY-RUSSによるユニット。スペイン語・中国語・ウチナーグチを織り交ぜたラップや、レゲエシンガーをフューチャーするなど沖縄のチャンプルー文化を体現したボーダーレスなステージで楽しませた。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(後編)

沖縄本島中部のヒップホップ・シーンで兄貴的な存在であるST-LOWは、そのキャリアを活かした安定感のあるステージでヒップホップファンたちを楽しませた。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(後編)

それと対になるかのように沖縄のヒップホップ黎明期を築いてきた本島南部のMCであるKZが登場。沖縄戦で激戦地となった地元・糸満をレペゼンするとともに平和への祈念をリリックで表現して、沖縄ヒップホップ勢のラストを飾った。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(後編)

ステージは雰囲気も変わり、カーネーションの直枝政広のアコースティック・ライブが始まる。直枝の落ち着いた歌声と演奏に、会場も一気に大人の雰囲気が漂う。そんな中、SOUL FLOWER UNIONの奥野真哉がゲストで登場し、競演を果たすと会場もヒートアップ。辺野古ビーチが贅沢な時間に包まれる。

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どんどん盛り上がっていく中、知花竜海×城間竜太のステージが始まる。THE HUMAN CHAINのメンバーらをバックバンドに従え、全てを解き放つかのようにイキイキとした知花竜海の歌と、数々のミュージシャンとコラボしてきた城間竜太の三線が絡み合って観客をロックする。沖縄の自然について歌った曲「新しい世界」では、歌に出てくる生き物たちが言霊となったように音がはねる。つられて子ども達が踊り、大人も踊る。このイベントの中心人物となって努力してきた知花が、夢描いてきた光景のような素敵なステージだった。

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前回のPeace Music Festa!から顕著に見られるようになったのが、親子連れの姿だ。今回は子ども達が安心して遊べるような子ども向けワークショップのブースも登場した。そして、何より辺野古の自然海岸で遊ぶ、子ども達の笑顔が最高に素敵だった。観光客が沖縄の自然と勘違いするほど、人工ビーチだらけになってしまった沖縄で、本当の自然に触れ合える大浦湾沿岸で遊んだ記憶は、彼らの中で素敵なものであってほしいと願う。

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そんな素敵な空気に包まれた辺野古ビーチにレゲエ界の大御所PAPA U-Geeが登場すると、Peace Music Festa!も終盤に向けて加速度的に熱くなっていった。地元名護のミュージシャンとメッセージを共有するために、ピースミュージックに合わせて集まってもらった、ボーダレスなアコースティックフルバンドをバックに迎え、名護の仲間たちや夕暮れ時の美しい辺野古のロケーションと一体となったライブを披露する。そのメッセージは「OH MAMA」の歌詞に集約されている「金じゃかえない自分のわざ もとうみんなでまもろうここを」。辺野古への敬意と人々の連帯を求めるメッセージが、レゲエのポジティブなサウンドになって辺野古の浜に鳴り響いた。

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そのメッセージは続くMISSION POSSIBLEのパフォーマンスで、より具現化される。まずはOLIVE OILのDJライブ。イントロから「MISSION POSSIBLE」のインストをMIXし、観客の興奮をあおる。有刺鉄線を揺らすような重低音のビートと、OLIVE OILのお洒落なサンプリング・センスが辺野古を包む。

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高ぶる期待の中、コウダイのギターをバックに颯爽とB.I.G.JOEが登場すると大きな歓声があがる。安定したラップ・スキルを見せつけて観客を完全にロックすると、隣接する米軍基地に向かって届けることを前置きして、全編英語詞の「WAR IS OVER」を歌う。静かな平和への希求に、時が止まるような瞬間だった。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(後編)

そして、いよいよBOSSを迎え入れて、最初で最後のMISSION POSSIBLEのライブが始まる。2人のリリックの一つ一つが「ごく僅かな金で奪われたROOTS」と歌われる分断された土地(沖縄:辺野古)のロケーションの中で、鼓膜に焼付く。そして、声高に右手を掲げて叫ぶ「一人じゃない!」。土地・文化・人・心まで、全てを分断されてきた歴史に、その言葉が木霊した瞬間に涙が溢れた。歓声を上げるつもりが、喉が震えて言葉にならなかった。

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その場を引き継いだTHA BLUE HERBのライブは、MISSIONを解体していくような解説書のような内容だった。BOSSはMCで沖縄が抱えてきた苦渋の歴史に敬意を払った上で、僕ら世代が歴史を共有して、北海道から沖縄までが繋がったことを語る。孤独な闘いを強いられてきた土地に、人の繋がりを再興していくイメージを与えるメッセージの数々。まさに今回のPeace Music Festa!の核心を突くパフォーマンス。そして、「未来は俺等の手の中」を辺野古に集まった皆と共有する。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(後編)

そんな辺野古の浜を優しくクールダウンさせてくれたのが七尾旅人。七尾の声とアコースティック・ギターの優しい音色が、日が沈んで肌寒くなってきた辺野古の浜を包んで、温かい気持ちになる。フード・ブースに並んだ温もりを感じさせる手作り料理を、集った仲間と食せば、さらに温かい気持ちが広がる。「Rollin’ Rollin’」で歌う「このグルーヴを捕まえて」に応答するように会場がひとつになっていく。でも音響の魔術師はそれだけでは終わらせない。サンプラーやエフェクターを多用してガラッと空気を変える。空間に歪みが生まれ、七尾の音が空間を支配する。その歪みから生まれる不安定感を楽しむかのような七尾旅人のステージは、ボーダーレスな今回のPeace Music Festa!を象徴するような素敵な時間だった。

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そして、ステージは残された時間を楽しもうと興奮のるつぼに達していった。トリを待たずしてSOUL FLOWER UNIONの登場。「荒れ地にて」から始り、キラーチューンを惜しみなく披露。もう初っ端から観客は踊り狂って、まさにお祭りバンドの形容に相応しいステージだった。毎回、Peace Music Festa!でのSOUL FLOWER UNIONのステージは、辺野古への熱い想いと、差し迫った終了時間に間に合わせねばならぬ主催メンバーの自覚(笑)が相まって、いつも以上に音が軽快に跳ねて自然と踊らずにはいられない。今回は久しぶりの辺野古ステージということもあって、熱のこもった最高の演奏だった。観客に交じって他の出演者たちが踊り楽しんでいたのも印象的だった。

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熱くなったステージでは、辺野古と同じく大浦湾に面する地元・名護の瀬嵩青年会の勇壮なエイサー演舞が繰り広げられる。前述した琉球トライブのいさっちも青年会メンバーとして出演した。このイベントの成功の影には青年会の活躍がある。イベントの趣旨に賛同して支援をしてくれた瀬嵩の青年会、そして会場に足を運んでくれた辺野古の青年会、何よりイベント開催に理解を示してくれた地元住民の理解が必要不可欠だった。沖縄の伝統芸能であるエイサーは、お盆(沖縄では旧暦)に踊られる先祖供養の舞踊である。現在は嘉例(カリー)付け[=縁起付け]として、祭りや結婚式などの各種行事で踊られる。伝統エイサーは、それぞれの集落(ムラや地域;沖縄ではシマと表現する)で独自のスタイルを持っていて、地元愛を表現するのに最もポピュラーな伝統芸能とも言えるだろう。そのため、隣のシマ(地域、ムラ)であっても、公の場で踊ることは容易くない。シマ同士の信頼の上で、余所のシマでエイサーを踊ることが出来たりする。しかも名護の東海岸は基地建設の是非をめぐり、住民が二分された緊張感の中にある。彼ら瀬嵩の青年たちがこの場所でエイサーを踊ったことは私たちの想像以上に奇跡的な出来事だったのかもしれない。それが出来たのも、今回のPeace Music Festa!が基地をめぐる賛成・反対を越えたところに焦点が置かれたこと、そして、辺野古の青年会や地元住民の理解や寛容など、人の繋がりがあったからだと考察する。それを踏まえた上で、イベント開催にあたって尽力してくれた地元の皆さんに敬意を表したいと思う。

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大トリはサルサの本場キューバでも好評の沖縄を代表するサルサ・バンドKACHIMBA DXの登場。しかも大所帯のフルメンバーVer.である。ラテンのリズムと沖縄の旋律が融合したチャンプルー音楽に自然と手足が動き出す。もう皆、踊り疲れているはずなのに、あらゆる境界線を忘れて、世代やファッションも違う人々が踊り明かす。観客席の中に手を繋いだ人々の輪っかが自然と生まれては消えていった。ゲストで知花竜海が登場し、爽快にラップをすると興奮もピークに達し、そのまま全員巻き込んでカチャーシーに突入。こうして最高の夜は幕を閉じた。宴の余韻が残る会場に後ろ髪をひかれながらシャトルバスに乗り込む人々。見知らぬ人と会話したり、それぞれが会場で起こった出来事を反芻するバスの中は祭りのあとの至福のひと時だった。

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Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(後編)

夢のような宴も終わり、いつもの日常に戻る。辺野古(名護市)が事あるごとに賛成か反対かという2択を迫られている状況は何も変わらない。同じ状況は辺野古のみならず、東村の高江区にも、沖縄市の泡瀬にも突きつけられている。沖縄だけじゃない。山口県の祝島でも、青森県の六ヶ所村でも同じ状況に住民が心を痛める。「繰り返される歴史の中、必要なものは本当は何?繰り返される歴史は長く、大事なことは本当は何?」この言葉が重く突きつけられる時が来ている。賛成か反対かという二項対立を越えて、人と人の繋がり感じられるシマを共有出来たなら、過疎のシマに突如やってくる開発の話に住民が二分されることはなかっただろう。今回のPeace Music Festa!の意義はそんな人の繋がりが再興できるような場所を創造していくことにあったと思う。

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たかが音楽、されど音楽。前述したようにPeace Music Festa!を開催したからといって現場の状況は何も変わらない。しかし、ここで繋がった人々の意識は確実に変化しているという事実もある。ITやSNSの発達によって人的ネットワークを活かしたツールがネット上には溢れている。Twitterなどでは早くもイベントに感化された人々から、次のPeace Music Festa!に向けた自主的なイベント拡散案などもささやかれている。このPeace Music Festa!のメッセージが拡散し続け、僅かな資本によって人々の心が分断される悲劇が起こらないシマになればと願う。開発の現場に全ての責任を押し付ける時代ではないのだから。わったー(私たち)は「一人じゃない!」。

Peace Music Festa!辺野古2010ライブレポ(後編)

Text by Taichi Yamanoha
Photo by Shinichiro Shinjo / Taichi Yamanoha

(→ライブレポ前編を読む



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Posted by Peace Music at 21:01│Comments(0)ライブレポ
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